仲が悪いと損をする!?未分割だと適用できない特例

遺産分割とは、相続が発生した際、被相続人の遺産を相続人全員の協議により分配する手続きです。誰に、どのような割合で分割するかは相続人の自由ですが、相続人全員の同意が必要となります。
相続人のうち一人でも納得せず、遺産分割協議書に署名・押印しなければ、その遺産は「未分割」の状態となります。

未分割だと適用できない特例2選

では遺産が未分割のままだと、相続税にはどんな影響があるのでしょうか。申告期限までに未分割の場合、適用できない特例が4つあります。その中でも特に重要な2つの特例をみていきます。

①配偶者の税額軽減
配偶者の税額軽減とは、配偶者が受け取った遺産額のうち、1億6,000万と法定相続分のいずれか多い金額まで相続税がかからない特例です。(→「妻や夫は相続税を払わないことが多い」
この制度は、残された配偶者の生活を守るために設けられています。そのため、どの財産が配偶者のものになるか確定していなければ、制度の趣旨に反してしまいます。したがって、遺産分割が未確定の状態では、この特例を適用することができません。
本来この特例により相続税を払わなくていい配偶者は多いのですが、未分割だとその恩恵を受けられなくなります。

②小規模宅地等の課税の計算の特例

小規模宅地等の特例とは、一定の条件を満たす土地の評価額を50%または80%減額できる特例です。
対象となるのは、事業に使っている土地や賃貸不動産、被相続人と同居していた自宅の敷地などです。
この特例も、被相続人が営んでいた事業や生活を、特定の相続人が継続することを支援するための制度です。配偶者税額軽減と同様、継続する相続人が決まっていなければ制度の趣旨に反します。そのため、分割が確定していない土地には適用できません。

未分割でも申告期限は延びない

相続税の申告期限は、被相続人が亡くなってから10か月です。遺産が未分割であることを理由に期限が延長されることはありません。
つまり、特例が適用できないまま申告し、本来より多くの相続税を納めなくてはならないのです。
ただ実際には救済措置があります。「3年以内の分割見込書」という書類を添付すれば、3年以内に分割が確定時点で特例を適用できます。その際、多く納めていた相続税額は還付されます。
しかしいったんは多額の税金を納めなくてはいけないため、納税資金の準備が必要です。
配偶者の税額軽減のケース
・遺産合計1億3,000万円を配偶者と子2人で分割
・分割確定時の相続税の総額:515万円
・未分割時の税額の総額:1,135万円(差額620万円を先に納税)
小規模宅地等の特例のケース
・遺産:自宅土地9,000万円+その他4,000万円を子3人で分割
・分割確定時の相続税の総額:約449万円
・未分割時の税額の総額:約1,080万円(差額約631万円を先に納税)

後日還付される場合でも、その期間の利息はつきません。また還付申告のときに税理士費用が別途かかります。

同じ資産を数人の人が評価することもあり、調査のリスクも高くなる

相続人が複数人いて争っている場合、本来一つであるべき遺産の評価額が、それぞれの相続人によって何通りもの金額で申告されることもあります。そうなると、税務調査の対象となるリスクも高くなります。

この他にも、相続争いにより、弁護士費用その他本来不要な費用がかかります。また金銭的な負担だけでなく、調査のリスク、争いにかける時間が膨大になります。
だからこそ円満な相続を実現するための事前の話し合いや準備が必要なのです。