年末調整で確認したい所得控除

年末調整とは、原則として「扶養控除等申告書」を提出している人が年に一度行う手続きです。
会社の従業員などは毎月給与から所得税を源泉徴収されていますが、1年の最後に、この年末調整で所得控除などを考慮することで1年分を精算します。
年末調整担当者は、従業員などから提出された書類から、それぞれがどの所得控除の対象となるかどうかを判定し、年末調整額を計算します。
2025年は税制改正によりこの年末調整がより複雑になり、何をどう記入したらいいのか、混乱する人が増えることが予想されます。
今回は、年末調整で提出する書類に関係する所得控除について見ていきます。

所得控除とは

所得税は、個人の所得(もうけ)に税率をかけて出します。
ただ個人はもうけの中から生活費を支出しており、生活費の負担は人それぞれ異なります。
こうした個々の事情に配慮するために設けられているのが「所得控除」です。
参考:「103万の壁って?~所得税のしくみ」

年末調整で提出する所得控除に関する書類

①扶養控除等申告書
②基礎控除申告書
③配偶者控除等申告書
④特定親族特別控除申告書
このほかに、該当があれば「所得金額調整控除申告書」と「住宅借入金等特別控除申告書」を提出します。
これらは「所得控除」ではないので、今回は説明を省きます。
なお、②③④は1枚の申告書にまとめられています。

扶養控除等申告書を提出することで受けられる所得控除

①「扶養控除等申告書」を提出することで受けられる控除は次の通りです。

②それぞれの控除が受けられる主な対象者と要件

扶養控除の注意点
12月から所得の要件が変わったため、令和7年度の扶養控除等申告書を提出しなおさないといけない人が増えると予想されます。
あらためて、16歳以上の同居している親族、仕送りをしている親族の所得(給与金額ではなく)の金額を確認するようにしましょう。

障害者控除の注意点
扶養控除の対象となる親族との違いは、16歳未満でも障害者控除は受けられる点です。

勤労学生控除の注意点
所得のほとんどが給与所得であることが必要です。

基礎控除申告書を提出することで受けられる所得控除

基礎控除は、所得金額に応じて控除額が段階的に変わります。
このため、その年の見積り所得金額をある程度正確に提出することが必要になりました。

配偶者控除等申告書を提出することで受けられる所得控除

配偶者控除や配偶者特別控除を受けるために提出します。
これらの所得控除を受けるためには、本人の所得が1,000万円以下であることが条件です。
また配偶者の所得によって控除額が変わるため、配偶者の見積り所得も正確に把握しておくことが求められます。

特定親族特別控除申告書を提出することで受けられる所得控除

この所得控除は2025年に新設されました。
以下のすべての要件を満たす親族がいる場合に適用されます。
①同一生計
②年齢が19歳以上23歳未満(平成15年1月2日~平成19年1月1日生まれ)
③所得が58万円超123万円以下

参考:大学生の子どもがアルバイトをした場合の税金の改正

細かな税制改正により、年々年末調整が複雑になり、書類を提出する方も作業をする方も負担が増していると感じます。
本来税金は国民全員が納めるべきもの。誰にでもわかりやすく、簡素に、納めやすくすることが大切だと思います。
まずは所得税の計算のしくみを基本としておさえ、自分がどの控除を受けられるのかを理解しておくことが、年末調整をスムーズに進める第一歩です。
年末調整の制度を正しく理解し、必要な書類を確実に準備することが、ミスや負担を減らすことにつながるでしょう。