賃貸不動産を相続した人が確定申告で気を付けること(必要経費・所得控除編)

賃貸不動産を相続した場合、相続した直後の確定申告は、通常の確定申告と異なる扱いをすることがあります。
今回は必要経費と所得控除について見ていきます。

固定資産税をいくら計上するか

賃貸不動産にかかる固定資産税は必要経費になります。
固定資産税はその年の1/1に所有している人に納税義務があります。
これに対し実際の納付は、4月以降に納税通知書が来て、最大4回に分けて納付することができます。
つまり、固定資産税の納税義務は全額が被相続人にあります。しかし実際には、相続人が一部または全額を負担することがあります。
この場合の被相続人と相続人の必要経費への計上は3つのパターンがあります。
①被相続人が全額必要経費として計上する(相続人は計上なし)
②被相続人と相続人がそれぞれ納期が到来した額で計上する
③被相続人と相続人がそれぞれ実際に支払った額で計上する


たとえば6月に相続があった場合、下の図のように計上します。

ちなみに固定資産税も遺産分割が確定してその不動産の所有者が確定するまでは、相続人の共有になります。
遺産分割が確定するまでは相続人全員に納税義務があります。

減価償却費

賃貸不動産の建物などは減価償却をしていきます。
減価償却の計算で必要な要素は以下の3つです。
・取得価額(未償却残高)
・取得時期(耐用年数)
・償却方法
被相続人の準確定申告では、死亡の時までの月数で減価償却費の計算をします。
その賃貸事業を引き継いだ相続人は、「取得価額(未償却残高)」と「取得時期(耐用年数)」は引き継ぎます。
しかし、「償却方法」は引き継ぎません。
通常、法定償却方法は減価償却資産を取得した日によって決まります。しかし相続の場合は、被相続人が資産を取得した日ではなく、相続人が相続した日によって法定償却方法が決まります。
つまり、被相続人の償却方法と違う償却方法で計算する場合があるということです。
たとえば被相続人が旧定額法で計算していても、相続した後は定額法になることがあります。
また、被相続人が償却方法の選択届を提出していても、相続人はその方法を引き継げず、改めて選択届を提出する必要があります。

配偶者控除や扶養控除に影響

賃貸不動産を相続したことで新たに所得が増えた人が、今まで他の親族の配偶者控除や扶養控除の対象になっていた場合には注意が必要です。
配偶者控除・扶養控除を受けるには、対象となる人の合計所得金額が58万円以下(2025年12月31日現在)である必要があります。
賃貸不動産の相続により所得が増えた結果、この要件を外れてしまうことがあります。
特に年末調整でこれらの控除を申告する際は、確定申告前の時点で所得を見積もる必要があります。
賃料収入は比較的見積もりやすいので、控除を受けている配偶者や親族にあらかじめ所得額を伝えるようにしましょう。

医療費控除

被相続人が生前に支払った医療費は、被相続人の準確定申告で医療費控除を適用します。
ただし、相続人が被相続人と生計一(日常の生活費を共にしていた)の場合は異なります。
この場合、被相続人の医療費は相続人自身の確定申告で医療費控除の対象にできます。
「被相続人と相続人のどちらが医療費を負担したか」で医療費控除の適用者が変わると考えておきましょう。

相続直後は、慣れない事務手続きや精神的な負担が重なる時期です。
そのなかで、普段とは異なるルールが適用される確定申告をご自身だけで対応するのは、なかなか大変なことです。
「例年と同じでいいだろう」と思っていると、思わぬ申告漏れや誤りにつながることもあります。
少しでも不安を感じたら、早めに税理士などの専門家に相談するようにしましょう。