賃貸経営はライフプランに沿ったリスク対策が必要

賃貸物件の所有者は、家賃収入という安定した収益を得る一方で、「現役時代」「引退後」「承継時」という各ステージで特有の課題に直面します。特に、将来起こりうるリスクに備えるための計画は欠かせません。

現役時代:キャッシュフロー管理

賃貸経営において、利益を生み出すことはもちろん重要ですが、手元にキャッシュを残しておくことも同様に大切です。
賃貸経営では、大規模修繕など将来的に大きな支出が発生することが多いので、ある程度の予測と計画をたて、適切な額のキャッシュを手元に確保しておく必要があります。
毎年発生する経費や税金の額は比較的予測できますが、悩ましいのは修繕費です。
発生する時期や金額が流動的であるうえ、一度にかかる金額も大きくなりがちです。
だからといってメンテナンスを怠ることはできません。適切な修繕が物件価格の維持、向上につながるからです。
毎年確定申告をおこなうことで、収支と現在の手元キャッシュの状況は把握できます。
しかしより確実な経営のために、将来にわたってのキャッシュフロー計算書も作成しておくことをおすすめします。

高齢になったとき:賃貸オーナーが認知症になった場合のリスク

不動産経営においては契約行為が非常に重要です。
具体的には入居者との賃貸契約、修繕業者との工事契約、そして将来的な物件の売買契約などが挙げられます。
物件の持ち主が認知症などで判断能力を失ったと判断されると、これらの契約行為ができなくなってしまいます。
たとえば子供などの親族が実質的に賃貸経営を代行しているケースでは、所有者本人に契約能力がないと判断されると、法律上、契約行為がストップしてしまうリスクがあります。
賃貸経営に定年はありませんが、所有権を安易に他者に移してしまうと、本人の生活資金である収入が減ってしまうことにつながります。
したがって経営上のリスクと本人の生活資金の確保という両面から、事前の対策が不可欠となります。
近年、任意後見契約や家族信託といった財産管理の制度が徐々に整備されてきています。これらの情報に敏感になり、早めの対策を検討することが大切になります。

承継するとき:誰にどのように相続するのか

土地や建物は相続税の優遇措置が用意されていることもあり、節税対策として推奨されることも多い資産です。
しかしその一方で、賃貸物件は遺産分割が難しく、また現金化がしにくいという問題も生じやすい資産でもあります。
相続人が複数いる場合は、賃貸経営の承継そのものだけでなく、他の相続人への配慮(死亡保険による代償金の準備など)が最重要となります。
選択肢は複数用意しておくことに越したことはありません。
管理できる範囲で、財産の種類を分散して準備しておくことが、円滑な承継へのカギとなります。

賃貸経営は、単なる物件管理や、まして税金対策ではなく、未来を見据えた計画的な資産運用です。
所有者のライフプランの変化に伴い、所有の目的も、経営の方向性も変化していきます。これらの変化に対応するためには、その時々に合わせた最適な対策が必要です。