その賃貸経営は副業?規模で税金の特典が違ってくる

不動産賃貸はその経営規模によって、税金の計算が大きく変わることがあります。
自分がどの規模に当てはまるかを正確に把握して税金計算をしないと、間違った申告をすることになってしまいます。

●「事業的規模」なのか「事業的規模以外」なのか

税金を計算するうえでの経営規模が「事業的規模」か「事業的規模以外」なのかは、簡単にいうと「あなたの不動産経営は本業レベルの規模なのか、副業レベルの規模なのか」の違いです。
ただし、賃貸経営規模が副業のように小さいからといって申告をしなくていいわけではありません。
規模が小さくても賃貸収入があれば申告は必要です。
しかし「本業レベルの規模でおこなっているのではない」ため、「事業的規模」でおこなっている人とは税務上の取り扱いが違ってきます。

●判定の基準:5棟10室基準

アパートなどの建物の貸し付けについては俗に「5棟10室基準」と言われる基準によって分けられます。

事業的規模に該当する場合
・貸家(戸建て)おおむね5棟以上を貸している
・部屋(アパート・マンション)をおおむね10室以上貸している
など

具体例
・マンションの2~3室を賃貸→事業的規模以外
・アパート1棟(8室)→事業的規模以外
・アパート1棟(12室)→事業的規模

●所得税を計算する上での主な違い

項目事業的規模事業的規模以外
青色申告特別控除55万円(e-Tax等なら65万円)10万円
専従者の取扱い青色事業専従者給与または事業専従者控除が受けられる受けられない
貸倒れ損失の取扱い発生した年に経費にできる売上が生じた年に遡って修正
建物取り壊し損失全額を経費にできる所得金額を限度として経費にできる

専従者の取り扱い:
 家族に仕事をしてもらっている場合、事業的規模であれば給与を経費と認められますが、
 事業的規模以外では認められません。

貸し倒れ損失:
 賃料の回収ができなかった場合、事業的規模であればできないと決まった年の損失として計上できます。
 事業的規模以外では賃料収入の計算をさかのぼってやり直す必要があり、申告時の手間が大きく違います。

建物取り壊し損失:
 建物が古くなったなどで取り壊した際、事業的規模であれば損失を全額経費にでき、
 損失を翌年以降に繰り越すこともできます。
 事業的規模以外では損失が所得金額を限度とされ、損失の繰り越しはできません。

今回は説明の都合上、本業、副業という言葉を使いましたが、ここでいう「事業的規模」=本業や「事業的規模以外」=副業は、あくまでも所得税を計算するうえでの分類です。
実際仕事を行う上では、副業であろうと本業であろうと経営のリスクも責任も同じです。
賃貸の部屋数にかかわらず不動産賃貸は片手間にできるものではありません。
「節税になる」「何もしなくてもかならず儲かる」といった甘い言葉にのらず、しっかりと資金計画、経営計画を立てて投資をするようにしましょう。

もし不安に思うことがあればぜひ専門家に相談してください。