税金を計算するうえでいくつか優遇される制度があります。
そのうち確定申告書を提出しないと優遇されない代表的なものについてみていきます。
●自宅を売却した場合の3,000万円特別控除
自宅を売却して利益が出ても、その利益が3000万円までは所得税と住民税がかからない特例があります。
しかしこの特例により税額を0にするには、売却の翌年3月15日までに確定申告をする必要があります。
うっかり忘れると無申告として税金がかかりますので注意しましょう。
●住宅取得等資金贈与の非課税
住宅を取得等するための資金を贈与した場合の贈与税の非課税制度は、申告期限内に確定申告書を提出することで適用となります。
贈与する額を非課税限度額までにして税額が出ないようにしたとしても、「贈与はあったが、要件を満たすので贈与税額は0である」という申告をしなくてはいけません。
贈与の年の翌年3月15日までという申告期限を過ぎると、その後に確定申告書を提出しても非課税とはならず、思わぬ税金を払わなくてはならなくなるため、くれぐれも注意しましょう。
●配偶者の税額軽減
この規定は、原則申告期限までに配偶者が受け取る遺産が確定していれば、
1億6千万円か法定相続分のどちらか多い金額までは配偶者の相続税がかからないという制度です。
例えば配偶者のみが1億6千万円以内の遺産を受け取るため相続税を払う必要がなかったとしても、
相続税は0であるという申告書は提出しなくてはいけません。
こちらは期限内の確定申告だけでなく、期限後の確定申告でも受け付けられます。
気が付かずに申告期限が過ぎてしまっていたら、すみやかに期限後申告書を出すようにしましょう。
●小規模宅地等の特例
この規定は、一定の要件を満たした土地の評価額が最大8割減額される制度です。
こちらも配偶者の税額軽減と同じように、対象となる土地を誰が取得するかが決まっていることが要件となっています。
またこの特例により相続税がかからなくなったとしても、税額が0であるという申告書を提出しなくてはいけません。
配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が適用されることで
相続税がかからない相続人は多いようです。
国税庁の2023年分の資料によれば、申告書を提出した相続件数の約2割が
相続税額がなくても申告書を提出しています。
その多くが配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用していると思われます。
さまざまな税法上の優遇規定により税額が0になったとしても、それは正規の方法により計算し、特例を受けた結果0になることを理解し、その計算過程を示した申告書を準備することが大切です。