財産を受け渡す側の意思を反映できる遺言について、その種類と内容などをみていきます。
●遺言の種類と特徴
遺言の方式として一般的なものは2つあります。それぞれの特徴を表にしました。
●公正証書遺言
公正証書遺言を作成する場合は、遺言を残そうとする人が、原則として公証役場に赴き、口述した遺言の内容を公証人が書き取ります。法律的に正しい遺言を作成できるので、遺言が偽造されたり、形式を満たさないことにより無効となる確率が極めて低くなります。また、原本を公証役場に保管するため、遺言書の所在が分からなくなることもありません。さらに相続の手続きをする際の検認の手続きが不要となります。
反面、証人2名が必要になること、遺言の作成に費用がかかります。
費用は財産の額や受け取る人数などにより変動しますが、たとえば、全部で8,200万円の財産を、母820万、長男3,690万、次男3,690万に分割するという遺言の場合は、約9万円前後の費用がかかる計算になります。遺言者が公証役場に出向くのではなく公証人などが病室などに出張する場合は、これに加えて日当や交通費がかかり、証人2名への費用がかかる場合もあります。
●自筆証書遺言
自筆証書遺言は、自由なタイミングで作成することができて証人も必要なく、費用もかかりません。しかし、遺言書の全文と日付、氏名は自分で書かなくてはならず、相続の手続きをする際に家庭裁判所による検認の手続きが必要となります。
手軽に作成することができますが、法律で決められた形式通りでないとその遺言書が無効となってしまいます。また、自宅などで保管している間に紛失したり、偽造される心配もあります。
●自筆証書遺言の法務局での預かり制度
自筆証書遺言のデメリットを軽減するために、法務局で遺言書を保管する制度を利用することができます。これにより相続の手続きをする際の家庭裁判所の検認が不要となり、かつ、法務局に保管してもらうため、紛失や偽造の心配がなくなりました。
この制度を利用する際の手数料は、遺言書1通につき3,900円です。また、遺言者本人が法務局に申請しに行く必要があります。
●ではどの方法で作成したらいいか
遺言を上記のどの方法で作成したらいいのかは、それぞれの事情によるのでもちろん一概には言えません。公正証書遺言であれば、争うことになったり、遺言が無効になったり、紛失偽造のリスクが極めて低くなるので安心です。しかし、それなりの金額となる費用や、証人を2名確保する手間などが気になります。
そこで、自筆証書遺言で作成しても比較的リスクが少ない場合の目安について挙げてみます。
1つは、相続の関係者で争う可能性が低いこと。そして、遺言の内容について関係者全員が承知していること。関係者全員の前で遺言書を清書するのもいいと思います。
2つ目は、遺言作成者本人が文字を書くことに支障がないこと。
3つ目は、遺言作成に関わる人の中に、遺言に関する形式、法律面、税金面での知識があること、または作成にあたり、そういった専門家が関わっていたり、相談をしていること。
そのうえで、紛失のリスクと検認の手間を省くために、法務局の遺言書保管制度を利用するといいのではないかと思います。
自筆証書遺言にしろ公正証書遺言にしろ、専門家への相談は、遺言が無効になったり、おもわぬ税金がかかったりするリスクを考えると、必要な手間と費用ではないかと感じます。