土地の「4つの価格」・使い分け方

3月の中旬に、国土交通省から公示地価が発表され、5年連続で全国平均が上昇した、というニュースが話題になりました。
土地には、実は4つの価格があります。「一物四価」とも呼ばれるこの考え方を知っておくと、相続や売却など、さまざまな場面で役立ちます。それぞれの価格がどのようなものか、またどのような場面で使われるのかを見ていきましょう。

実勢価格

実勢価格とは、土地が実際に売買されたときの価格のことです。
取引はそれぞれ個別の事情によって変動するため、決まった計算式や法則はありません。そのため、正確な価格をあらかじめ把握することはできません。
実務的には、周辺地域の過去の取引データ(REINS)や不動産広告の価格をもとに、参考値として推測する形になります。

公示価格

公示価格は、国土交通省が毎年3月中旬から下旬に発表する価格です。その年の1月1日時点における、標準的な土地の正常な取引価格として公表されます。
実際にその価格で取引が行われたものではなく、不動産鑑定士などが適正な価格として算定したものです。
土地取引の基準となるほか、後述する相続税評価額や固定資産評価額の算定基準にもなっています。
なお、7月1日時点の評価として「基準地価」もあります。こちらは各都道府県が発表するもので、公示価格を補完する役割があり、指標としてはほぼ同じように捉えて差し支えありません。

相続税評価額

相続税評価額は、国税庁が毎年7月1日頃に発表する価格で、相続税や贈与税を計算する際の基準となります。
正確には、相続税評価額の算定根拠となる「路線価」と「評価倍率」が発表される形です。路線価の見方については、別コラム「路線価はどうやってみたらいい?」をご参照ください。
相続税評価額は、公示価格のおよそ8割の水準とされています。

固定資産税評価額

固定資産税評価額は、各市区町村が3年に1度、1月1日時点の価格として算定するものです。
固定資産税・都市計画税・不動産取得税・登録免許税など、各種税金を計算する際の基準として使われます。
水準としては公示価格のおよそ7割とされています。
この価格は、毎年送付される「固定資産税課税明細書」で確認できるため、4つの価格の中で私たちが最も手軽に把握できる価格といえます。

「4つの価格」の比較

どの価格を、どの場面で使うか

土地に関わる手続きや判断が必要になったとき、4つの価格のどれを参照すればよいかは、場面によって異なります。

相続税・贈与税を計算するとき

相続や贈与が発生した場合、税額の計算には相続税評価額(路線価・評価倍率)を使います。
実勢価格や公示価格ではなく、国税庁が定めたこの価格が基準となるためです。
路線価は公示価格のおよそ8割という水準に設定されているため、実際の取引価格より低くなることが多く、その分だけ税負担が抑えられる仕組みになっています。

遺産分割協議をするとき

相続人同士で「誰がどの財産を受け取るか」を話し合う遺産分割協議では、公示価格や相続税評価額が参考として使われることが多いです。
ただし、これらはあくまでも参考値です。
相続人の間で意見が対立し、弁護士が介入するような場面になると、「どの評価方法を採用するか」自体が争点になることがあります。
実勢価格・公示価格・相続税評価額のどれを採用するかで、各相続人が受け取る財産の価値が大きく変わるため、慎重な対応が必要です。

売却するといくらになるか、おおよそ知りたいとき(すぐに売るつもりはない場合)

「いつかは売ることになるかもしれないが、今すぐではない」という場合には、公示価格が手軽な目安になります。
公示価格は国土交通省が毎年発表しており、誰でも無料で調べることができます。
実勢価格ほどの精度はありませんが、自分の土地がおおよそどのくらいの価値なのかを把握するには十分な指標です。

実際に売り出し価格を決めるとき

「本当に売る」という段階になったら、実勢価格の調査が必要です。
周辺エリアの直近の取引事例や、現在市場に出ている物件の価格を不動産会社に調べてもらい、実際に売れる価格帯を見極めます。
公示価格はあくまでも理論上の基準値であり、実際の市場では立地・形状・接道状況・周辺環境などによって価格が上下するため、
売り出し価格の判断には実勢価格の把握が欠かせません。

「土地の価格」といっても、目的によって使うべき指標は異なります。相続や贈与では相続税評価額、売却を検討する際は実勢価格や公示価格、というように、場面に応じた使い分けが大切です。