親がアパートや貸家などの不動産賃貸業をしていたけれど、突然の相続で「何をどう手続きすればいいの?」と不安に思う方も多いのではないでしょうか。 不動産賃貸業を営んでいた方が亡くなった場合、相続人が事業を引き継ぐには、税務上さまざまな届出や申請が必要になります。
ここでは主な手続きをご紹介します。
●青色申告承認申請
被相続人が青色申告の承認を受けていた場合でも、その承認は自動的に相続されるわけではありません。
相続人が賃貸業を引き継ぐ場合は、改めて青色申告承認申請書を提出する必要があります。
相続人の青色申告承認申請書の提出期限は、死亡の日(相続開始を知った日)に応じてそれぞれ次のように決まっています。
・1/1~8/31の間に死亡した場合…死亡の日から4か月以内
・9/1~10/31の間に死亡した場合…その年の12月31日まで
・11/1~12/31の間に死亡した場合…その年の翌年2月15日まで
また、相続人ごとに提出が必要です。遺産分割が決まっていなければ念のため相続人全員が提出しておくと安心です。
●青色専従者給与届出書
青色申告には、家族などへの給与を必要経費にできる「青色専従者給与」の特典があります。相続後にこの制度を利用する場合は、新たに届出書を提出する必要があります。
提出期限は、相続した日や新たに青色専従者になった日から2か月以内です。
●給与支払い事務所等開設届出書・源泉所得税納期特例の承認申請書
相続後も青色専従者や従業員に給与を支払う場合
・給与支払事務所等開設届出書
・源泉所得税納期の特例の承認申請書
の提出が必要です。
源泉所得税納期特例は、給与支給対象者が常時10人未満のとき、源泉所得税の納付を年2回にできる特例です。
事務処理の負担を減らしたい場合には、積極的に活用しましょう。
●準確定申告
年の途中に死亡した場合、相続人が1月1日から死亡した日までの所得と税額を計算して申告をする必要があります。これを準確定申告といいます。
この準確定申告は、死亡の日(相続の開始があったことを知った日)から4か月以内に提出します。
この準確定申告は相続人が連名により提出します。
●インボイスに関する届け出
被相続人がインボイス(適格請求書)発行事業者だった場合でも、相続人はその登録を相続することはできません。
相続人が引き続きインボイス発行事業者となるためには、新たな登録手続きが必要です。
具体的には次の2つの届け出が必要です。
①「適格請求書発行事業者死亡届出書」を提出
②「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出
インボイス登録は、最長でも被相続人の死亡日から4か月以内でその効力が失われてしまうので、それまでに相続人のインボイス登録の通知を受け取る必要があります。
インボイス登録にはある程度の時間を要するので、早めの提出をおすすめします。
初めて賃貸業をすることになる相続人の場合、確定申告や届け出など、慣れない手続きが多く発生します。提出期限を過ぎると不利な扱いになることもありますので、注意が必要です。
不動産賃貸業の相続は、ケースによって必要な手続きも異なります。
「これで合っているのかな…」と不安なときは、早めに税理士に相談されることをおすすめします。
当事務所では、不動産賃貸業の相続に関するご相談を随時受け付けております。