相続税申告で一番大切なことは、被相続人の遺産を漏れなく申告すること

4/7の日本経済新聞で「相続手続き、銀行・証券大手7社が一括対応 隠れ口座も照会可能に」という記事が掲載されました。
銀行や証券など大手金融機関7社が、今秋に顧客の遺産相続手続きを一括で対応できるよう、新会社を設立するというものです。
これまで金融機関ごとに必要だった書類提出が一度で済むほか、気づかなかった故人の口座を見つけることもできるようになるとのこと。

遺産分割でも相続税申告でも一番重要なのは、被相続人の遺産を漏れなく把握することです。
しかし実際にはこれが大変な作業で、相続後の相続人の大きな負担になっています。
この金融機関の新しいサービスが広がり、相続後の相続人の負担が減ることを期待します。

税務署は遺産に漏れがないかをチェックしている

令和7年12月に公表された「令和6事務年度における相続税調査等の状況」によると、
税務署は、無申告や過少申告の案件に対して積極的に調査をおこなっています。
調査には大きく2種類あります。
「実地調査」は9,512件実施されました。そのうち約82%が誤りの指摘を受けています。さらに約13.6%には、重加算税が課されています。
「簡易な接触」は21,969件と、実地調査の2倍以上の件数ですが、文書での回答、電話、税務署への来署などでの調査で、指摘を受けたのは約26%でした。申告漏れや計算誤りなどを是正するのが主な目的のようです。
これらの数字から、税務署は提出された申告書以外の資料も活用しながら、申告された以外の財産がないかを確認しています。
遺産が漏れなく申告されているかを重視しているのでしょう。

遺産の計上が漏れていると

遺産の計上が漏れていた場合には、次のようなペナルティが課されます。
無申告加算税―申告をしていなかった場合
過少申告加算税―一部の遺産が漏れていた場合
重加算税―遺産を故意に隠していたりした場合、悪質なケース

さらに遅延利息の意味合いを持つ延滞税も加わります。
正しく申告している方との不公平をなくすために、こうしたペナルティは厳しく設定されています。
詳しくは、「申告をしなかったとき、遅れたときのペナルティ」をご覧ください。

遺産の把握は、なぜ難しいのか

実際に相続が発生すると、相続人や税理士は様々な方法で財産を調べていきます。
しかし、いくつかの財産は特に見落とされやすいです。
銀行口座・証券口座は、通帳やメモをもとに推理するしかありません。
被相続人しか知らない口座があり、通帳などが残っていない場合、相続人には把握が難しくなります。
これが思わぬ税務署の調査につながるケースもあります。

不動産は、全部事項証明書・名寄帳・固定資産税課税証明書などの書類で調べます。
特に私道は漏れやすい財産のひとつです。
生命保険も注意が必要です。被相続人が保険料を支払っていても、被保険者(保険事故の対象者)が別の人であるケースがあります。
この場合、被相続人の死亡によって保険金が支払われるわけではないため、相続財産と気づかないことがあります。
被相続人が所有していた保険証券を丁寧に確認することが重要です。

税理士に早めに伝えるほど、スムーズに進む

税理士は相続税申告に必要な書類の一覧をお渡しします。
しかし財産の漏れを防ごうとすると、どうしても確認する書類の種類が多くなってしまいます。
手続きをわかりやすく、効率的に進めるためには、最初の段階で税理士に情報を伝えることが大切です。
「こういう財産がありそう」「被相続人はこんな職業だった」「生前はこんな生活をしていた」といった情報が、財産の見落とし防止に役立ちます。

ご自身でできる最大の備え――「終活」で財産を整理する

相続人に余計な負担をかけないために、「終活」として財産を整理しておくことをお勧めします。まず取り組みたいのは、資産の棚卸しです。
・自分にどれくらいの財産があるかを書き出す
・銀行口座・証券口座の一覧表を作っておく
・残高が少ない銀行口座は解約する
・使っていない土地は、処分に向けて動き出す こうした整理をしておくことで、相続人の手間を大幅に減らすことができます。
そして何より、自分自身もすっきりとした気持ちで、残りの人生を過ごせるようになるのではないでしょうか。