節税のための贈与が思わぬトラブルを招くことも

相続税を節税する方法の1つに、相続財産そのものを減らすことがあります。そのため、財産を生前に子どもなどに贈与しておく「生前贈与」をすすめられることがあります。
しかし、節税だけを考えて贈与すると、後々トラブルになることもあります。

生前贈与が節税になるしくみ

生前に贈与しておけば、亡くなったときの相続財産が減り、相続税も少なくなります。方法は大きく2つあります。

1つ目は、年間110万円までの贈与です。この範囲なら贈与税はかかりません。

2つ目は、110万円を超えても、相続税率より低い贈与税率での贈与する方法です。たとえば、今の財産額で計算すると相続税率が30%になりそうな場合を考えてみます。このとき、あえて10%の贈与税を払って贈与しておくほうが、相続税と贈与税を合わせた負担が軽くなることがあります。

ただし、注意したい規定が2つあります。

暦年課税の場合

相続で財産を受け取る人への贈与は、相続開始前7年以内の分が、原則として相続財産に加算されます(生前贈与加算)。※
その分は節税になりません。
※加算期間は、2024年以降の贈与から3年→7年へ段階的に延長されています。

相続時精算課税の場合

年110万円を超える部分の贈与が相続財産に加算されます。
こちらも相続財産を減らす効果はありません。

贈与でおこりがちな思わぬトラブル

このように、安易に贈与すると、節税にはならないだけでなく、税金以外の面でトラブルになることもあります。

事例①お孫さんの口座に移していたお金

「孫の口座に10年前から毎年110万円ずつ移してきました。お金に困ったときに使えるように、キャッシュカードは渡していません。
相続がおきても、7年より前の分は贈与済だから、相続財産には入らないと思います」 
こうおっしゃる方がいました。しかし残念ながらこの預金は相続財産に含まれます。
このような預金を「名義預金」といいます。お孫さんが自由に使えず、贈与が成立していないとみなされるためです。そのため、何年前のものでもさかのぼって相続財産になります。

事例②兄弟で知らなかった援助

息子のAさんとBさんがいるご家庭のお話です。20年前、Aさんが家を買うときに相続時精算課税を選択して、2000万円を援助しました。そのときは贈与税はかかりませんでした。
ところが、相続税の申告のときに、この2000万円が相続財産に加算されることになりました。Bさんはそこで初めて援助のことを知りました。AさんもBさんも気まずい思いをしたそうです。

事例③働かなくなってしまったお孫さん

相続税の節税のため、お孫さんに毎年300万円ずつ贈与していた方がいました。相続財産は減り、節税にはなりました。しかし、お孫さんは何もしなくてもお金が入ってくるため、いまだに働かず、家で過ごしているそうです。

数字の先にある暮らしを考える

節税だけを考えると、数字ばかりに目が向きがちです。けれでも実際には、お金やモノが動き、受け取った方の生活はその後も続いていきます。
贈与は、渡す方も受け取る方も、数字だけでは見えない影響を及ぼします。その後の暮らしや人生も含めて、実行したいものです。

弊事務所では、税金の計算だけでなく、ご家族のこれからの生活も一緒に考えます。
贈与を考え始めたら、お気軽にご相談ください。