私は現在、小中学校で租税教室の講師を務めています。
聞いてくれる相手が小中学生ですので、中にはあまり熱心に話を聞いてくれない子もいます。
そうした子どもたちに対して、私がどのようなスタンスで向き合っているのかを、今回は書いてみたいと思います。
「生徒」ではなく「納税者」に語りかける
租税教室を担当する税理士の先生方の間でもよく話題になるのが、授業中に寝てしまう子への対応です。
怒るべきか、注意すべきか——悩ましいところです。
私自身は、教室にいる子どもたちを生徒や子供としてではなく、納税者に向けて話ししているつもりで臨んでいます。
大人でも同じことが起こる
ここでいう納税者とは、税務相談やセミナーにいらっしゃる一般の方をイメージしています。
こうした人は大人ですし、それぞれ目的をもっておいでになるため、あからさまに退屈そうな態度を取ったり、居眠りをしたりすることは多くはありません。
それでも、あまり楽しくなさそうな表情をしていたり、興味を持てずにいそうな方は、やはりいらっしゃいます。
そうした場合でも、「税理士の話を聞かないのか」と腹を立てたり、「私の話を聞いてください」と注意したりすることは当然ありません。
もちろん気持ちの良いものではありませんが、まずはなぜそのような反応になるのかを考えるようにしています。
小中学生は、興味がなくても授業に出席し、その場に座っていなければならない立場です。
つまらない、あるいは関心を持てない授業であっても、席を立つことは許されません。
一方、相談やセミナーにいらっしゃる納税者の方は、ある程度は「聞かなければならない」という意識を持って参加されている方たちです。
このように、両者には立場の違いがありますが、いずれにしても、話を聞いていないような様子になったり、居眠りをしてしまったりするのには、何らかの原因があるものです。
聞いてもらえない理由を考える
小中学生の場合、大人の反応を試したり、かまって欲しかったりする気持ちがあることもあります。
ですから、小中学生向けの租税教室と、一般の方向けのセミナーや相談を、単純に同じものとして考えることはできません。
とはいえ、興味がなさそうだったり、つまらなそうだったり、いねむりをしてしまったりする反応の背景には、たとえばこのような原因が考えられます。
・話の内容がむずかしくてよく理解できない
・専門的な言葉が多く出てきて置いていかれているように感じる
・話すスピードが速く、理解が追いつかない
・話し方が単調で、眠くなってしまう
伝わるようにこちらが工夫する
話の内容が難しい場合には、少しやさしい例を挙げたり、たとえ話に置きかえたりします。
話をつめ込みすぎて早口になっている場合には、内容を多少はぶいてでも、ゆっくり話すようにしています。あるいは、大事な部分だけを強調したり繰り返したりして、話に抑揚をつけるようにしています。
専門用語が難しいと感じられるときは、その用語を丁寧に解説するようにしています。
また、話が単調で眠くなってしまいそうなときは、無理に笑いを取ろうとはしませんが、具体的で興味を引くエピソードを交えることで、少しでも関心を持ってもらえるよう心がけています。
「聞かせる」のではなく「伝える」姿勢
このように、話を聞いてもらうための工夫をこちら側がすることも、大切なのではないかと思います。
相手を変えることはできませんが、自分にできることをやる努力は必要だと思います。
子どもを相手にした租税教室でも、大人を相手にしたセミナーでも、私のスタンスは基本的に変わりません。税理士に求められているのは、税金のことを相手にわかってもらうことだと考えています。
税理士が教えてあげている、話を聞くべきだ、尊重されるべきだ——そのようには考えません。
税理士は「先生」と呼ばれる立場ではありますが、大切なのは、自分の話を聞いてほしいと相手に求めるだけでなく、相手に伝わるよう努力することです。
それこそが、専門家としての役割ではないかと思っています。

