生成AIがどんどん進歩しています。帳簿付けから決算書、申告書の作成までAIがやってくれるなら、税理士に頼む必要はなくなるように思えます。
申告書は本来、納税者本人が作成するものです。本人が作ることが難しいなどで、税理士が代わりに作成します。それならば、AIを使って自分で申告書を作れれば、税理士はいらないのではないか。そう思う人がいても不思議ではありません。
それでも税理士に頼む意味はどこにあるのか。私なりに考えてみました。
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理屈の上では税額は誰が計算しても同じ
日本は租税法律主義(税金は法律に基づいてのみ課されるという原則)をとっており、計算方法も法律で定められています。
税理士でも自分で計算する人でも、法律どおりに計算しなければなりません。
ですから理屈の上では、誰が計算しても同じ税額になるはずです。
「税理士に頼むと税金が安くなる」はこれからも通用する?
しかし現実には、税理士に依頼する人が多くいます。その理由はいろいろあるでしょう。
そのうちの一つが「税理士に頼めば税金を安くしてもらえるから」という理由です。
ではこの「安くなる」とはどういうことなのでしょうか。
「自分で計算したときより安くなった」
税金の知識がないまま自分で計算すると、計算の誤りや特例の適用漏れが起こりがちです。税理士に頼んでそれを正せば、税額が下がることがありました。ただし、それは「本来の税額に戻った」というだけのことです。AIが正確に計算できるようになれば、税理士に頼む前から適正な税額がわかります。
「たくさん経費にしてくれて安くなった」
法律で経費と認められない支出はそもそも経費になりません。たとえば、私的な支出を経費に紛れ込ませたり、実際には支払っていない費用を計上したりすれば、それは節税ではなく法律違反です。
もちろん現実には、法律にあらゆるケースが書かれているわけではありません。税理士は法律の趣旨に照らしてその取引が経費として認められるかを判断します。「税理士に依頼したらたくさん経費にしてくれた」というのは、こうした判断の結果、ご自身で判断していたときより、経費として認められるものが増えたということです。税理士が自由に経費を増やしているわけではありません。
この積み重ねた判断をAIが学習していけば、最初から適正な税額を出せるようになるでしょう。
このように「税理士が計算するから安くなる」という理由は、AIの精度が上がるほど無くなっていくでしょう。
そう考えると、適正な税額を出すための計算だけなら税理士は必要なくなるのかもしれません。
それでも税理士に頼む3つの意味
私が考える意味は次の3つです。
①結果に責任を持っている
税理士は作成した申告書の内容に責任を負います。
今のところAIの出力結果には誰も責任を負ってくれません。
②対話ができる
AIが正確に計算できるといっても、それはAIに正確な情報を提供できた場合のことです。AIも質問をして、必要な情報を集めることはできるでしょう。しかし、情報は質問への答えだけで得られるとは限りません。ちょっとした雑談の中に貴重な情報が含まれていることもあります。
③相談できる
特例のどれを使うか、いつ使うか。納税資金をどう準備するか。こうした相談にも対応してもらえます。複数の特例から選べる場合は、選び方やタイミングで税額が変わることもあります。
また、対話にも通じることですが、相談は答えを求めるためだけのものではありません。話しているうちに課題が整理されたり、自分の判断基準がはっきりしたりすることもあります。
多くの人は税金を支払うのを大きな負担と感じます。どうせ払わなければならないのなら、納得したうえで、適正な額を納めたいものです。適正な税額を計算することはAIにもできるでしょう。しかし、適正な額だからといってそれだけで納得できるとは限りません。
逆に言えば、「責任」「対話」「相談」をしてくれない税理士には、頼む理由がなくなってしまうでしょう。私たち税理士もこれからのAI時代は、このことを意識して仕事をしていかなくてはならないと思っています。
