累進課税のしくみを、正しく理解して正しく恐れる

税金の決め方の一つに「累進課税方式」とよばれるしくみがあります。
これは、所得が大きくなるほど適用される税率が高くなる、という考え方です。

累進課税とは 所得税・相続税・贈与税に共通するしくみ

この累進課税は、所得税・相続税・贈与税に採用されています。

このように所得や相続財産が多くなるほど、税率も上がっていきます。

よくある誤解 「全額」「一律」の税率ではない

しかし、この累進課税のしくみは、誤って理解されていることが少なくありません。 相続税を例にとると、たとえば遺産の総額が7億円だった場合、一見すると7億円にそのまま55%の税率がかかるように見えます。

しかし実際の表の見方は次のようになります。
まず自分の法定相続分にあたる金額の欄を確認します。
その欄の税率を掛け、そこから「控除額」を差し引いたものが実際の税額になります。
つまり遺産の総額が7億円であっても、自分の法定相続分が半分であれば、見るべきは3.5億円の欄ということになります。

速算表のしくみ 「控除額」の意味

ではこの表にある「控除額」とは、何を意味するのでしょうか。

相続税の税率は、本来次のようになっています。

例えば3.5億円の遺産を取得した場合、本来であれば図解①のように段階ごとに税率を掛けて積み上げていく計算になります。
速算表では、この積み上げ計算を簡略にしたもので、図解②のように、55%から「低い税率のはみだし部分」(控除額)を差し引いて税額を求めるしくみです。

このように計算すると、3.5億円の遺産を取得した人の実際の税率(実効税率)は38%となります。

急激に税率が上がるわけではないけれど

このように累進課税方式は、世間で言われているほど急激に税率が上がるしくみにはなっていません。とはいえ3.5億円の遺産に4割弱の税金がかかるのはけっして軽い負担ではありません。

所得税・相続税のいずれにおいても、認められた特例や控除を適切に活用し、課税所得や財産価額を抑えていくことが、確実な節税につながります。

まとめ 累進課税は「事前の対策」で大きく変わる

しかし事前に対策をおこなうかどうかで、税額に大きな差が生じるのも事実です。所得税であれば控除の活用や所得の分散、相続税であれば生前贈与や資産構成の見直しなど、早めの準備が重要になります。
「遺産の半分を税金で持っていかれる」といった極端な言い方に必要以上に振り回される必要はありません。大切なのは「税負担をいかに最適化するか」という視点です。ご自身の状況に合った最適な方法を検討されたい場合は、早い段階で専門家へご相談されることをおすすめします。