正解のない仕事だから、税理士になった今も学び続けている

「税理士です」と名乗ると、よく「たくさん勉強して合格なさったんですね」と言っていただきます。
たしかに税理士試験に合格するまでにはひと言では言い表せないくらいの勉強が必要でした。
けれど、税理士になってからは試験に合格するためのとはまた違った意味での勉強が欠かせません。

当然のことですが、実際にご相談いただく内容は、試験勉強で扱う問題とは違います。とくに相続に関するご相談は、1件ごとに論点がまったく異なります。
ですから、ご相談をいただくたびに、あらためて調べたり考えたりすることが欠かせません。

税理士会の研修

税理士には、1年間で36時間の研修受講が義務づけられています。
そのため税理士会からも、オンデマンドやリアルタイム形式(会場受講やウェビナー)での研修が用意されています。
私は、興味のあるテーマについてはオンデマンドで好きな時間に受講しています。
また、それ以外にも税理士として知っておきたい分野に触れておく目的で、所属している支部が主催するリアルセミナーを月に1回受講すると決めています。
もともと耳から入ってきた情報の方が頭に残りやすいタイプなので、この形式はとても助かります。

ただひとつだけいうなら、東京税理士会のオンデマンド研修は視聴開始が朝6時からなので、もう少し早い時間から見られたらなあと思っています。
私が朝型だからではありますが、せっかく「いつでもどこでも」学べるのがウェブ研修の強みなので。

インターネットで調べる

ご依頼をいただいたときや、気になる論点を見つけたときは、まずインターネットで検索することから始めます。おおまかに論点を把握し、抜けやもれがないかを確認する作業です。
根拠となる条文や通達、国税庁の見解などが載っているページやタックスアンサーなど、公的機関の情報もネットに載っていることが多いです。

専門書を1冊、まず読んでみる

はじめて扱う論点や、少し不安のある論点に出会ったときは、まず関連書籍を1冊買って読みます。
目次に目を通し、必要だと思うところから読み進めて、大まかな全体像をつかむイメージです。

実際にご相談や申告のご依頼をお受けした案件については、同じ分野の本を数冊まとめて購入することもあります。
私は税理士協同組合に加入しているので、組合の書店であれば専門書を10%引きで購入できるのも、ありがたいところです。

他の税理士や士業の方に相談する、セミナーで学ぶ

税理士や他士業の方が開催するセミナーにも参加します。また、知り合いの先生に直接相談することもあります。
答えそのものだけでなく、その方の考え方や物事の見方、答えにたどり着くまでの道すじがとても参考になるし、自分の考えを整理することにもなります。

相談する際は、あらかじめ自分なりの考えをまとめてから持参し、先生の考えとすり合わせるという形が多いです。

生成AIとのつきあい方

私は業務を速くこなすために生成AIを使ってはいません。
とくに相続のご相談は、お客様お一人おひとりの事情に、どれだけ丁寧に向き合えるかが大切だと思っているからです。
ただ、生成AIについて研修を受けたり自分で試したりしていると可能性を感じることがあります。
それは精度の高い問いかけ(プロンプト)を組み立てることができれば、税務判断のための情報収集を手伝ってくれる場面があるということです。
論点の整理や、調べる方向性を絞り込む場面では、頼りになる下調べの相棒になりえます。

もちろん、生成AIはもっともらしい誤った情報(ハルシネーション)を自信満々に答えてくることもまだまだ多いので、出てきた内容をそのまま鵜呑みにはできません。
必ず条文や通達、専門書、国税庁の見解などにあたって確認が必要です。

私自身、今のところは「答えを速く出すための道具」としてではなく、「ひとつの論点をより深く、多角的に検討するための道具」として、生成AIとの付き合い方を模索している最中です。
けれども生成AIは、月単位で進化していくスピードの速い分野です。
今後もどんなことができるようになっているかを常にチェックしていくことが欠かせません。

いちばんの学びはお客様から

お客様が疑問に思われたことこそ、最高の学びのきっかけになります。税法や会計処理についての知識は、もちろん税理士側にありますが、発想やアイデアはお客様から生まれることも少なくありません。

そのアイデアが税法や税務署とのやり取りの中で認められるかどうかを一つひとつ当てはめていくのが、税理士の仕事です。自分だけでは思いつかなかった視点が出てきたときは、そこから改めて税法や税務の実務に即して調べ直すこともあります。こうしてお客様から教わることは、本当に多いです。

お客様と税理士が「教える・教えられる」という一方通行の関係ではなく、ひとつの目標に向かって一緒に考えていくといった関係でお仕事ができることが、私にとっての理想でもあります。

税理士試験のための勉強は、「合格するため」という目標が原動力でしたが、
税理士として働くいまは、「お客様のため」というのがいちばんのモチベーションになります。

税理士の返答には責任がともないます。しかも試験問題と違ってただひとつの正解というものもありません。
だからこそ、さまざまな方法を使い分けながら、これからも日々学び続けていきたいと思っています。